↑アマデウス(モーツアルト)とサリエリ
「アマデウス」(1984、公開1985)は、モーツアルトを、実は大変ひょうきんものであり、
ユーモアの持ち主であったという観点で描いていた。
若くして逝った天才音楽家ウォルフガング・アマデウス・モーツァルトと宮庭音楽家
アントニオ・サリエリの対決を通してモーツァルトの謎にみちた生涯を描いている。
製作はソウル・ゼインツ、監督は「ラグタイム」のミロシュ・フォアマン。
モーツァルトの死をめぐる豪華絢爛な舞台劇を、見事に映像化した傑作。物語はかつて宮廷音楽家
だったサリエリの回想から始まって、モーツァルト(アマデウス)の人物像を追っていった。
そのなかに、様々な音楽的見せ場やミステリーの要素を散りばめている。一瞬たりとも見逃せない。
モーツアルトの本名は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。
アマデウス(「神に愛される」の意味)とは、そのミドルネームから来ている。
一世一代の快演を見せるT・ハルス、妬みと誇りの共存するサリエリに扮したエイブラハム
(アカデミー主演男優賞)の演技がすばらしかった。
1823年11月、凍てつくウィーンの街で1人の老人が自殺をはかった。「許してくれモーツァルト、
おまえを殺したのは私だ」、老人は浮わ言を吐きながら精神病院に運ばれた。数週間後、元気に
なった老人は神父フォーグラー(リチャード・フランク)に、意外な告白をはじめた・・・。
老人の名はアントニオ・サリエリ(F・マーリー・エイブラハム)。かつてはオーストリア皇帝
ヨゼフ二世(ジェフリー・ジョーンズ)に仕えた作曲家だった。神が与え給うた音楽の才に深く感謝し、 音楽を通じて神の下僕を任じていた彼だが、神童としてその名がヨーロッパ中に轟いていたウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(トム・ハルス)が彼の前に出現したときその運命が狂い出した。
作曲の才能は比類なかったが女たらしのモーツァルトが、サリエリが思いよせるオベラ歌手カテリナ・ カヴァリエリ(クリスティン・エバソール)に手を出したことから、彼の凄まじい憎悪は神に向けられた のだった。皇帝が姪の音楽教師としてモーツァルトに白羽の矢を立てようとした時、選考の権限を持っ ていたサリエリはこれに反対した。そんな彼の許へ、モーツァルトの新妻コンスタンツェ(エリザベ ス・ベリッジ)が、夫を音楽教師に推薦してもらうべく、音譜を携えて訪れた。コンスタンツェは苦し い家計を支えるために、何としても音楽教師の仕事が欲しかったのだ。
フルートとハープの協奏曲、2台のピアノのための協奏曲・・・。譜面の中身は訂正・加筆の跡がない 素晴らしい作品ばかりだった。再びショックに打ちのめされたサリエリは神との永遠の訣別を決意し た。神はモーツァルトの方を下僕に選んだのだ。ある夜の、仮面舞踏会。ザルツブルグから訪れた父
レオポルド(ロイ・ドートリス)、コンスタンツェと共に陽気にはしゃぎ回るモーツァルトが、
サリエリの神経を逆撫でする。
天才への嫉妬と復讐心に燃えるサリエリは、若きメイドをスパイとしてモーツァルトの家にさし向け た。そして復讐のときがやってきた。皇帝が禁じていたオペラ「フィガロの結婚」の上演を
モーツァルトが計画したのだ。サリエリがスパイから得た情報を皇帝に密告したとも知らず、
モーツァルトはサリエリに助けを求める。それを放っておくサリエリ。やがて父レオポルドが死んだ。 失意のモーツァルトは酒と下品なパーティにのめり込んでいく・・・。
そして金のために大衆劇場での「ドン・ジョバンニ」作曲に没頭していくモーツァルトに、
サリエリが追い打ちをかける。変装したサリエリが、モーツァルトにレクイエムの作曲を依頼した
のだ。金の力に負けて作曲を引き受けるモーツァルトだが、精神と肉体の疲労は想像以上に
すさまじく、「魔笛」上演中に倒れてしまうのだった。
やがて、サリエリが強いた過酷な労働のためか、モーツァルトは息を引きとった。モーツァルト35歳、
1791年12月のことだった。すべてを告白し、いまや老いさらばえたサリエリひとりが、惨めな生を
生きるのだった。
自分よりも、才能があると思われる男に対する嫉妬と憎悪に狂った姿を描いた。


