↑下:名演光った丹波哲郎(右は三谷昇)
丹波哲郎が先日亡くなりました。享年84歳。
半世紀におよぶ映画人生。「007は二度死ぬ」では、ショーン・コネリーと共演。
三船敏郎、田宮二郎らと並ぶ国際スターといってよいでしょう。
時代劇、現代劇、活劇、「砂の器」など数々の名作に出演。
映画、テレビで一時代を築いた名優の一人といえます。
代表作を何本か取り上げたいと思います。
第1弾は、「軍旗はためく下(もと)に」(1972年)です。
キネマ旬報の1972年度映画の邦画ベストテンでは、堂々の「第2位」。
ちなみに、ベストテンは、以下のとおり。
第1位 忍ぶ川 監督:熊井啓
第2位 軍旗はためく下に 監督:深作欣二
第3位 故郷 監督:山田洋次
第4位 旅の重さ 監督:斎藤耕一
第5位 約束 監督:斎藤耕一
第6位 男はつらいよ 柴又慕情 監督:山田洋次
第7位 海軍特別年少兵 監督:今井正
第8位 一条さゆり 濡れた欲情 監督:神代辰巳
第9位 サマー・ソルジャー 監督:勅使河原宏
第10位 白い指の戯れ 監督:村川透
(上位5位までは、いづれ劣らぬ名作ぞろいです。下位には、時代を反映しているのでしょう、
日活ロマンポルノが2本(8,10位)も入っています。確かに、いい映画ですが=笑。
それにしても、タイトルがすごい!=爆。)
「軍旗はためく下に」は、強烈でした。ショッキングでした。
戦争物は苦手といって、目をそらさず見てほしい映画の1本です。
アクション映画では、日本のトップクラスの監督である深作欣二による「仁義なき戦い」と並ぶ傑作映画。テーマは一見重いですが、感動的な映画です。
戦争で、極限状態の中の人間の狂気を描いたという点では、あの「地獄の黙示録」にも匹敵するものでしょうか。監督・深作欣二、原作・結城昌治の直木賞受賞作・『軍旗はためく下に』、 脚本・新藤兼人という一流人が結集、骨太の反戦映画となっていました。
丹波哲郎扮する富樫勝男・軍曹は、敵前逃亡の罪により、軍法会議で処刑された
ということで、その未亡人サキエ(左幸子)が、1952年(昭和27年)施行の“戦没者遺族援護法”に基づいて遺族年金の請求をします。しかし、政府はこれを却下。そこから物語が始まります。
“敵前逃亡”の確たる証拠はなく、サキエは、以来、約20年間、1971年(昭和46年)の今日まで夫の無罪を訴え続けてきました。そして、ある日、サキエはついにその小さな手掛かりを手にします・・・。
その手がかりというのは、亡夫が所属していた部隊の生存者の中で当局の照会に返事をよこさなかったものが4人いた、という事実。その4人とは、元陸軍上等兵寺島継夫(養豚業)、元陸軍伍長秋葉友幸(漫才師)、元陸軍憲兵軍曹越智信行(按摩)、元陸軍少尉大橋忠彦(高校教師)。
サキエは藁にもすがる思いで、この4人を追求していくと、その追求の過程で、更に多くの人物が彼女の前に現われてきます。師団参謀・千田少佐、小隊長・後藤少尉、富樫分隊員・堺上等兵、同小針一等兵。
サキエの前に明らかにされたものは、今まで想像もしたことのなかった恐るべき戦場の実相だった。・・・敵前逃亡、友軍相殺、人肉嗜食、上官殺害等々、そうしたショッキングな事件が連続する中で、サキエは否応なく、亡夫のたどった苛烈な戦争の道を追体験していくことに。
一転して、戦時中にフラッシュバック・・・。
まさに戦争の狂気。
さまざまな恐るべき現実を隠蔽するために、敵前逃亡をでっち上げ、軍が銃殺刑にする際の描写が鬼気迫ります。気の弱い人には、お勧めできません(笑)。
銃殺される富樫軍曹を含む数人で肩を組んで、”天皇陛下、~”と言って亡くなっていく姿。壮絶。丹波哲郎の演技が光っています。代表作の1本でしょう。
出演
丹波哲郎 (富樫勝男)
左幸子 (妻・富樫サキエ)
藤田弓子 (娘・富樫トモ子)
三谷昇 (寺田継夫)
ポール牧 (ポール・槙)
市川祥之助 (超智信行)
中原早苗 (超智信行の妻)
関武志 (秋葉友幸)
内藤武敏 (大橋忠彦)
中村翫右衛門 (千田武雄)
江原真二郎 (後藤少尉)
夏八木勲 (堺上等兵)
藤里まゆみ (堺上等兵の妻)
寺田誠 (小針一等兵)
山本耕一 (厚生省課長)
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