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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

2022年「第96回キネマ旬報ベスト・テン」ベストワンは「ケイコ 目を澄ませて」。

2022年第96回キネマ旬報ベスト・テン」が発表された。

ケイコ 目を澄ませてが日本映画のベスト1映画となった。「ケイコ~」は主演女優賞岸井ゆきの助演男優賞三浦友和読者選出日本映画監督賞三宅唱)の4冠を達成。2022年度の日本映画を代表する作品となった。

■ 2022年 第96回キネマ旬報ベスト・テン受賞結果は以下の通り。
□ 日本映画ベスト・テン 1位
ケイコ 目を澄ませて
□ 外国映画ベスト・テン 1位
リコリス・ピザ
□ 文化映画ベスト・テン 1位
「私のはなし 部落のはなし」
□ 個人賞
主演女優賞
岸井ゆきのケイコ 目を澄ませて」「神は見返りを求める」「犬も食わねどチャーリーは笑う」「やがて海へと届く」により


主演男優賞
沢田研二土を喰らう十二ヵ月」により
助演女優賞
広末涼子あちらにいる鬼」「バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版」「コンフィデンスマンJP 英雄編」により

 

広末涼子のコメント:

長引くコロナ禍で「役者という職業が必要なんだろうか、と考えさせられる時期もあった」と明かし「映画が人に勇気やパワーを与えてくれると信じて、生きている限り俳優を続けていきたいと思います」と、喜びを語った。  

昨年公開された「あちらにいる鬼」「バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版」「コンフィデンスマンJP 英雄編」に出演。

中でも作家で僧侶の故・瀬戸内寂聴をモデルに、男女3人の特別な関係をセンセーショナルに描いた小説が原作の「あちらにいる鬼」では、夫の不倫をすべて承知しながらも心を乱すことのない妻を好演した。

助演男優賞
三浦友和ケイコ 目を澄ませて」「線は、僕を描く」「グッバイ・クルエル・ワールド」により
新人女優賞
嵐莉菜「マイスモールランド」により
新人男優賞
目黒蓮「月の満ち欠け」「映画 おそ松さん」により
日本映画監督賞
高橋伴明「夜明けまでバス停で」により
外国映画監督賞
ペドロ・アルモドバル「パラレル・マザーズ」により
日本映画脚本賞
梶原阿貴「夜明けまでバス停で」により

梶原阿貴のコメント:

「年配の俳優さんは、セリフを覚えるのが苦手なので、できるだけ短くしている」というのが面白かった。話を振られた三浦友和は「セリフを1行くらいにしてくださいよ」と笑わせた。高橋伴明が話している途中で、口をとがらせてちょぼちょぼ動かしていたのは癖なのか、すねているのか、何か言いたげだった(笑)。伴明監督は「梶原が脚本賞を獲って、ライバルの先輩で悔しがっている脚本家がいることがうれしい」と語っていた。
特別賞
小林信彦 映画文化全体の発展に大きな功績を残されたことに対して
読者選出日本映画監督賞
三宅唱「ケイコ 目を澄ませて」により
読者選出外国映画監督賞
シアン・ヘダー「コーダ あいのうた」により
読者賞
川本三郎 連載「映画を見ればわかること」により

 

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映画「TAP The Last Show」(2017)を見る。監督・主演水谷豊。タップダンス映画。

TAP The Last Show」(2017)を見る。俳優・水谷豊の初監督作品。

邦画では珍しいタップダンスを題材にした映画で、オーディションのシーンは「コーラスライン」のようでもあり、タップダンスの群舞は「ラ・ラ・ランド」や古くは「42nd Street」やフレッド・アステアジンジャー・ロジャースのコンビ映画を彷彿とさせる。

水谷豊が20代前半の時から40年間もアイデアを温め続けていたといい、満を持して初監督と主演を務めた作品。

共演は、岸部一徳北乃きい、六角精児、六平直政、ゲスト出演の様な前田美波里のほか、5人の若手メインキャストが出演している。

当初は水谷扮するタップダンサーを主演に撮る予定だったが、水谷の年齢を考慮し、大ケガを負い一線を退いた元タップダンサーが未来ある若者たちを導く“師弟物語”に変更された。

・・・
渡(わたり)真二郎(水谷豊)はかつて天才の名をほしいままにしていたタップダンサーだったが、10数年前に公演中に大怪我を負い、ダンサー生命を絶たれてしまう。
それ以来、怪我した足を引きずり、酒におぼれる日々を送っていた。

ある日、旧知の劇場支配人の毛利(岸部一徳)が「最高の舞台で劇場を閉めたいので、その最後のショーを演出してほしい」という相談を持ちかけてきた。

渡は渋々その依頼を引き受け、出演するダンサーのオーディションの審査をすることになる。会場には様々な事情を抱えた若いダンサーたちが集まってきた。

渡はオーディションの審査をするうちに、タップへの思いを彼らに託そうと決意。渡の止まった時間が再び動き出す。


・・・
日本でのタップダンスがメインの映画はほとんど知らないが、映画の終盤の約20分間のタップダンス・シーンは、生の舞台を見ている感覚になるほど迫力があった。

ミューカル映画というのが日本では少ないが「TAP」のような映画がもっと増えればいいがと思う。

www.youtube.com 予告編

  劇場支配人の毛利(岸部一徳、左)は亡くなっていない(ラストシーン)

                     前田美波里もゲスト出演(?)



【キャスト】
渡真二郎:水谷豊
森華:北乃きい
MAKOTO:清水夏
JUN:西川大貴
RYUICHIHAMACHI
MIKA:太田彩乃
YOKO:佐藤瑞季
事務員・夏木萌:さな
アステア太郎:HIDEBOH
八王子のジンジャー:島田歌穂
田所トメ:吉田幸
吉野完治:六平直政
松原貞代:前田美波里
毛利喜一郎:岸部一徳

 

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【電話が登場する映画】韓国映画「ザ・コール」に触発されて…。

 

    Netflix配信

最近、サスペンスホラーの韓国映画ザ・コール」(2020、Netflix)を見た。

韓国映画のスリラー映画も最近はすさまじいものがある。「ザ・コール」は「恐怖ノ黒電話」(2011、イギリス)のリメイクだという。

          「ザ・コール」より。

古い電話の向こうから聞こえてくるのは、運命を変えようとする連続殺人犯の声。20年という時間をこえ、同じ家に暮らす2人の女の人生がいま大きくゆがみ始める…というスリラー。

        あっと驚く展開(「ザ・コール」より)

・・・

ということで、映画に登場する電話、電話ボックス、携帯電話、コードレス電話など電話関連をざっと挙げてみた(たっふぃーさん風に)。

・・・

まずは定番の「ダイヤルMを廻せ!」「ダイヤルM」。「The GUILTY/ギルティ」「鳥」「裏窓」「トーク・レディオ」「恐怖ノ黒電話」「コール」フォーン・ブース」「オン・ザ・ハイウエイ その夜、86分」「激突」「マトリックス」「リミット」「レインマン」「夕暮れにベルが鳴る」

「メルブルックス 新サイコ」「サウンド・オブ・サイレンス」「イーグル・アイ」「セルラー」「パルプ・フィクション」「ハリガン氏の電話」「フォーリング・ダウン」「ブラック・フォン」「デスマシーン」「モーテル」「フライングハイ」「スピード」死刑台のエレベーター」「ゲット・アウト」「10 クローバーフィールド・レーン」「暗闇にベルが鳴る」「ホステル」「ダーティハリー」「ダイ・ハード3」「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」「電話で抱きしめて」「サーチ/Search」

「ドント・ハングアップ」「30デイズ・ナイト」「スペル」「スクリーム」「コンプライアンス服従の心理」「リメンバー・ミー」(韓国)「ボイス」(韓国)「ザ・コール」(韓国)「コネクテッド」(香港)「風の電話」「着信アリ」「スマホを落としただけなのに」「東京少女」「イニシエーション・ラブ」「天国と地獄」「妖怪大戦争 ガーディアンズ」…。 

      こちらも「ザ・コール」の1シーン

 

 

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映画「イニシェリン島の精霊」(原題:The Banshees of Inisherin、2022)を見る。アカデミー賞9部門ノミネート。

イニシェリン島の精霊」(原題:The Banshees of Inisherin、2022)を見る(MOVIXさいたま)。監督は「スリー・ビルボード」のマーティン・マクドナー。第80回ゴールデングローブ賞で最多7部門8ノミネートされ作品賞、主演男優賞、脚本賞の3部門を受賞。主演はコリン・ファレル

アカデミー賞では9部門にノミネートされていてド本命ともいわれている。期待して見に行くと、エンタメ性がないので、肩透かしの退屈さに裏切られるかもしれない。ただ、アカデミー賞の賞レースでは、何か獲りそう。

親友と思っていた人間から、理由もなく「たった今から縁を切る。今後は一切話しかけるな」と言われたら「あなたならどうする~♪」(笑)。
・・・
本土が内戦に揺れる1923年が舞台。アイルランドの孤島、イニシェリン島。対岸での本土(イギリス)では、内戦が始まろうとしている。

島民全員が顔見知りのこの平和な小さい島で、パードリック・スーラウォーン(コリン・ファレル)は長年友情を育んできたはずだった友人コルム・ドハティ(ブレンダン・グリーソン)に突然の絶縁を告げられる。

パブでの飲み友達だったはずなのに、なぜかと聞くと「お前の話はつまらない。ロバが糞をしたという話を2時間したよな。退屈な人間だからだ」だった。

コルムは「これからは、つまらない人間の話を聞くという人生には嫌気がさした。オレは残りの人生を有意義に過ごす(作曲したり…)」というのだ。

もし、話しかけてきたりすれば、その都度「〇〇をXXする」という宣言をされてしまう。パードリックは、仲直りの希望をもって話しかけてしまうのだが「〇〇をXXする」というのが実際に起こってしまい騒動となってしまう。

本気だったということがパードリックもわかっていく。二人はよりを戻すことができるのか…。

 「親父(警官)に殴られてさ」
・・・
孤島が舞台で、ニュースらしきものは一切なく、そこに住む人々は、パブで気晴らしをするくらいしかなく、パードリックが、友人のコルムを連れてこなかったりすると、やかましいほどのうわさとなる。


登場人物も、店の女主人などは、客に何かニュースはないかと毎回聞くが、何もないという返事ばかり。店では郵便の扱いもしているようで、パードリックの妹シボーン・スーラウォーン(ケリー・コンドン)に来た手紙の封を開けてしまったりして、何の話か詮索するうるささ。


コルムにとって、小さな島で目的もなく生きるパードリックとの時間は「生産性のないもの」として見えたのか。「優しい人間というが、17世紀に優しかった人間のことなど誰も覚えていない。一方で、モーツアルトは誰でも覚えている」という。

偏屈な人間や、変わり者が多い村の中で、パードリックの妹シボーンは読書家で常識を持ち合わせている。モーツアルトを17世紀といったが18世紀だと訂正している。

島国から出ていないためか、パードリックは、周りから見ればバカにされている存在。

パードリックは、妹シボーンに「オレはこの島で一番のバカか?」と聞くと、いやドミニク・キアニー(バリー・コーガン)だろうと意見が一致。それでは、2番目か、と食い下がるが、兄思いの妹は否定する。

そんな中、シボーンは本土での職を得て閉鎖的な社会を飛び出して去っていく。


前半は、単調で平坦なストーリーだったが、後半から、そこまでやるかという事態が起こり、驚かされる。見終わった後で、じわじわと味わいが増す映画ではあった。


コルムのセリフだったか「人生は、死ぬまで暇つぶしが続く」という言葉があったが、閉鎖的な小さな島で暮らす人々にとっては、何も起こらず暇・暇・暇の毎日が続く。

息子ドミニクに暴力をふるう警官がいたり、告解を聞く司祭が暴言を吐いたりとブラック・ユーモアも見られた。


中予言者の様な老女が登場するが、この老女は、人の死を叫び声で予告するといわれるアイルランドの精霊・バンシーという存在のようで、きょう2人死ぬ、などと予言していた。精霊をモチーフにしているというが、あまりピンとこない。


2人の友情の崩壊から始まる予測不能なまさかまさかのストーリーが展開されるところが見どころ。

 

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映画「ヘルドッグス」(2022)原田眞人監督、岡田准一主演。

ヘルドッグス」(2022)を見る。原作は深町秋生の小説「ヘルドッグス 地獄の犬たち」。監督は原田眞人岡田准一とは「関ヶ原」「燃えよ剣」に続き3作目のタッグとなる。岡田が闇落ちした元警官・兼高に扮し、坂口健太郎と相棒(バディ)を組んで、秘められたミッションのために、組織を上り詰めていく。

共演は「蜜蜂と遠雷」などの松岡茉優のほか、北村一輝大竹しのぶ、酒向芳、MIYABIなど。


・・・
新宿交番勤務の警察官、出月梧郎(岡田准一)は、スーパーで働く女子高校生と仲良くなり、デートの約束をする。デートの前日、スーパーに中国人マフィアが乱入、従業員4人を銃殺した。

その殺された従業員の中に、女子高生が含まれていた。捕まった犯人の一人マッド・ドックは、証拠不十分で釈放されてしまう。それが元で、出月は警察から姿を消す。

数年の月日をかけ、出月はマッド・ドックを始めとした一連の犯人たちを見つけ出し、殺害した。やがて、警視庁に身柄を拘束された出月は、罪の精算をする代わりに、関東最大の暴力団東鞘会への潜入を命じられる。

現在秘書を務めていた十朱(MIYAVI)が会長に就任した事で、反発した氏家が東鞘会を抜け、対立が激化した。

そこに、兼高昭吾と名を変えた出月が入る。兼高は東鞘会の傘下である神津組の組長・土岐(北村一輝)が組織する裏仕事専門部隊ヘルドッグスの室岡(坂口健太郎)に近づくことにした。

1年が過ぎ、ヘルドッグスに入隊した兼高は、どんどんとその地位を高め、室岡と共に十朱のボディガードに推薦されるまでになるのだが…。

・・・
ノンストップ・バイオレンス・アクションで、カメラもスピーディに動き、きびきびしていた。岡田准一は、キレキレのアクションを見せて、もはやアクションスターの唯一無二の第一人者。

女殺し屋ルカ(中島亜梨沙)が登場するが、岡田准一に絡むアクションは「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」のレベッカ・ファーガソン並みにすさまじかった。


<主要キャラクター>
■兼高昭吾=出月梧郎(岡田准一)…復讐のために闇に手を染め、その獰猛さゆえ警視庁に目をつけられヤクザ組織「東鞘会」に潜入させられる。躊躇なく人を殺め高い格闘スキルとクレバーさで組織をのしあがる。極道のイメージを覆すタトゥーが特徴。腕には人を殺した人数が彫られている。趣味はマッサージ。
■室岡秀喜(坂口健太郎)…兼高を“アニキ”と慕う「東鞘会」のヤクザ。死刑囚の親を持ち、幼い頃に受けた虐待の境遇から、感情を抑えられないサイコパスとして組織一とも目される凶暴性と残虐性を持つ。
■吉佐恵美裏(松岡茉優)…「東鞘会」の神津組のボス・土岐の愛人であり、兼高とも道ならぬ関係を持つ、肝の座った極道の女。背中の鳳凰の刺青が特徴。
■十朱義孝(MIYAVI)…異例の人事で「東鞘会」の組長に就任。日本そしてアジアで勢力を伸ばす。華奢に見えて高い戦闘能力を有する。趣味は美術鑑賞。警察が隠したい“秘密のファイル”を持っている。
■土岐勉(北村一輝)…兼高と室岡のボスで「東鞘会」の最高幹部。「東鞘会三羽烏」の一人。一本筋の通った昔ながらのヤクザで人情に厚く、兼高と室岡を高く評価している。
■衣笠典子(大竹しのぶ)…表の顔は兼高が常連のマッサージ師。裏の顔は潜入者への情報伝達係。「東鞘会」に息子を殺されて以来、復讐のタイミングを虎視眈々と狙っている。
・・・
日本映画というよりも、アジアのやくざ映画といった印象。セリフが早口で、声が小さかったりで聞き取りにくさがあった。酒匂芳のセリフは、舞台で鍛えているせいか、自然でよどみがなく完璧。風貌もインパクトがある。


岡田准一の強みが存分に生かされている。

 

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映画「流浪の月」(2022)日本アカデミー賞優秀作品賞。

      

流浪の月」(2022)は「悪人」「怒り」の李相日(リ・サンイル)監督作品。日アカ(日本アカデミー賞)の優秀作品賞に選出されたので「ハケンアニメ!」とともに追っかけでみた。「2020年本屋大賞」で大賞を受賞した凪良ゆうの小説を原作にしたドラマ。

10歳の少女を自分の部屋に入れたために誘拐罪で逮捕された男が15年後に成長した彼女と再会する。出演は広瀬すず松坂桃李横浜流星多部未華子趣里三浦貴大内田也哉子柄本明など。

  

・・・
家内更紗(さらさ、幼少期:白鳥玉季)はかつては家族と共に幸せな日々を過ごしていたが、父が亡くなり母親が恋人と同居し始めてからは、ずっとおばの家で世話になっていた。

おばの家での暮らしは堅苦しく、常に気を張っていなければならなかった。夜になると、おばの中二の息子の孝弘が部屋に入ってきて、体をさわってくるのもとても嫌だった。

10歳の更紗は、そうした虐待を受けていたことから、学校が終わるといつも公園で過ごしていた。

その公園には、小学生からロリコンと呼ばれる19歳の大学生・佐伯文(ふみ、松坂桃李)がいた。ある日、公園では雨が降った。

更紗がびしょ濡れになっているのを目にした文は、更紗に傘を差し出す。そして、引き取られている伯母の家に帰りたくないという更紗の気持ちを知り、自分のマンションに招き入れる。

更紗は文のもとで2か月を過ごす。その間、更紗は行方不明の女児として、全国に実名報道されていた。

      

そして、文と更紗が一緒に外出した先で通行人に見つかり、文は誘拐犯として逮捕されてしまう。警察官に抱えられ保護される更紗。

更紗が「文と別れたくなくて」泣き叫ぶシーンは、居合わせた人の携帯電話で撮影・拡散されていった。その後更紗は「傷物にされた可哀想な女の子」、文は「ロリコンで凶悪な誘拐犯」というレッテルを貼られ続ける。

二人の関係は、周囲の人たちが思うものとは全く違うものであったにも関らずに。そして事故から15年過ぎ、24歳になったある日、更紗は偶然文と再会する。

あの時の可哀そうな子とロリコン凶悪犯が、また交際を始めたということで、店やアパートの郵便受けなどに「ロリコン野郎」などのチラシや、スプレイの殴り書きがあり、世間の風当たりの強さもエスカレートして異常なほどだった。

文には付き合っていた谷あゆみ(多部未華子)という彼女がいたが、文の過去を週刊誌で知ったあゆみが文を訪ねてきた。文が話してくれなかったのは、私のことを信頼していなかったからだと指摘。「小児性愛者だから私と大人の関係を持たなかったのか」と尋ねた。文がうなずくと彼女は憤慨して去っていった。

一方の更紗も、現在同棲している婚約者・中瀬亮(横浜流星)から関係を求められても「恋愛の先にそういうことをしなければならない」というのは耐えられないと拒絶。すると、亮のモラハラパワハラのDVといった暴力性が現れて、殴る蹴るのすさまじさ。

文は、幼少時の体験から「みんな大人になっていく。君も立派な大人に成長した。僕だけがいつまでも大人になれない」という第二次性徴が来ない病気を患っており、そのことを他の人に知られることをもっとも恐れていたのだった。

更紗は文のもとに歩み寄り、泣きじゃくる彼に腕を回すと、強く抱きしめた。更紗と文は、誰も自分たちのことを知らない土地で2人だけで暮らそうと決めた。

「また気づかれたらどうする」という文の問いに、更紗はすぐに返答した。「その時は、また流れていけばいい。」

   


・・・
外部からは見えない真実や、恋愛でも友情でもない言い表しにくい2人の関係性が描かれているという点では「シベールの日曜日」にも似ている。

「人は見たいようにしか見ない」という台詞があったが、だれでも自分の価値観や常識と考えていることを盲信し、そこからはみ出る者を許そうとしない傾向はあるようだ。

役者の演技がよかった。広瀬すずが、軽蔑するような眼差しで亮(横浜流星)を見るときの冷たさ、怖さ。”伸びしろ一番”将来大女優間違いなしといった演技を見せている。

横浜流星もすさまじい。松坂桃李は、最近は「孤狼の血」「新聞記者」など意欲的な作品で新境地を開いている。


【キャスト】
家内更紗:広瀬すず
家内更紗(幼少期):白鳥玉季
佐伯文:松坂桃李
佐伯音葉:内田也哉子
中瀬亮:横浜流星
谷あゆみ:多部未華子
安西佳菜子:趣里
安西梨花:増田光桜
湯村:三浦貴大
阿方:柄本明

【スタッフ】
原作:凪良ゆう「流浪の月」(東京創元社刊)
監督・脚本:李相日
撮影監督:ホン・ギョンピョ
音楽:原摩利彦

 

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映画「ハケンアニメ!」(2022)日本アカデミー賞優秀作品賞。

  

ハケンアニメ!」(2022)はSNSなどを通じて絶賛の声があったので見た。「ハケン」は派遣でなく覇権日本アカデミー賞「優秀作品賞」の5本のうちの1本。ほかは「ある男」「シン・ウルトラマン」「月の満ち欠け」「流浪の月」。

演技部門では吉岡里帆が主演女優賞、尾野真千子助演女優賞柄本佑助演男優賞に選ばれていている。

アニメ業界を舞台に、製作陣の奮闘する姿を描いた直木賞作家・辻村深月の小説の実写映画化。

期待の新人監督と崖っぷち状態の天才監督が、アニメ界の頂点を目指して火花を散らす。新人監督を「見えない目撃者」などの吉岡里帆、彼女と覇権を懸けて争う相手を「人数の町」などの中村倫也が演じる。

共演は他に、柄本佑尾野真千子古舘寛治、六角精児、徳井優工藤阿須加小野花梨高野麻里佳前野朋哉など。

監督は「水曜日が消えた」などの吉野耕平、脚本は「サクらんぼの恋」などの政池洋佑。


・・・
最も成功した作品の称号を得るため熱い闘いが繰り広げられている日本のアニメ業界。公務員からこの業界に転身した斎藤瞳(吉岡里帆)は、初監督作「サウンドバック」で憧れの監督・王子千晴(中村倫也)の「リデルライト」と火花を散らすことになる。

一方、かつて天才として名声を得るもその後ヒット作を出せず、後がない千晴はプロデューサーの有科香屋子(尾野真千子)と組み、8年ぶりの監督復帰に燃えていた。


瞳はクセが強いプロデューサーの行城理(柄本佑)や仲間たちと共に、アニメの頂点「ハケン(覇権)アニメ」を目指して奮闘する。

・・・
吉岡里帆は、CMの「URであーる」くらいしか知らなかったが「見えない目撃者」ではイメージを一新させるほどの演技を見せて印象深かった。メガネをかけただけで大きく印象が変わるが、似合っていて強い意志を示し、今回の日本アカデミー賞の”最優秀”主演女優賞も可能性が大いにありそうだ。


劇中劇として登場するアニメ2作品だけでもそれぞれ映画にできそうな作品で、この映画の製作陣の意気込みが感じられる。アニメの絵コンテから、声優のアテレコ風景までの裏側を見られるのでアニメに関心がなくても面白い。

      アニメの声優に指示を出す新人監督


ツイッターなどのSNSを通しての視聴者の反応の推移も面白い。大きく引き離されていたアニメが、テレビ番組の回を追うごとの視聴率の争いで、最後のどんでん返しがあり痛快でもある。夕方5時の放送というアニメで、最終話でアニメ主人公を死なせていいものかどうかという白熱した議論も見どころ。


劇場でアニメを数年に一度くらいしか見ない客層(fpdのこと?)でも、アニメ制作の裏側をみられて興味深かった。

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